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 2004年11月20日更新

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Close up 杜氏

「私にとって酒造りは、毎年、毎年が一年生みたいなもんです。」熟練杜氏が、今回の話しの結びにこの言葉を選んだ。城下町盛岡の紺屋町にある菊の司酒造。創業は、元和年間。220年もの伝統を築き上げ、値段を上げずに質を上げるこだわりのある酒造りを行っている蔵元である。その菊の司酒造の杜氏を務めている小田中俊雄氏に今回お話しを伺った。

-南部杜氏ならではの酒造りと酒の味の特長は他と比べてどう違いがあるのでしょうか。

「やはりですね。東北地方は、他と比べて気候が寒いから米が硬く出来上がるんですよ。その米を使う分、麹造りに時間をかけてさらに醪(蒸米・麹・酒母・水を合わせたもの)日数も長く期間をとって仕込むんですよ。他の地方だと3月に仕込みが終わるとすぐ火入れ(酒に熱を加えて殺菌すること)が始まるようですが、うちではある程度熟してから5月に火入れを行います。味の特長はですね。灘のどっしりと荒さのある酒と比べて淡麗な味わいでさわやかな香りのあるのが南部の特長でしょうね。」

-杜氏とは、酒造りの長を表した言葉ですが、どのような仕事を行っているのでしょうか。

「私が下で使えていた頃の杜氏は、あまり働きませんでしたね。(笑)ただ下の者に指図して、後は醸造科のお役人さんに酒の出来ばえを報告する帳面を付けていましたね。とにかく、昭和30年代までは麹造りのグループだけで3名、醪母3名と人がたくさんおって大きな組織になっていたんです。そいで、日本酒の出荷が多い時期でしたから、杜氏は指図するだけで良かったんでしょうが、40年代に入ってその形態が変わったんですよ。」

小田俊雄杜氏

小田中俊雄杜氏
プロフィール
昭和11年、岩手県紫波町生まれ。
19歳のときに酒屋に働きに出て以来、宮城、福島、北海道と経て昭和44年に菊の司酒造の杜氏を務める。今年、菊の司酒造で32造り目を迎える熟練南部杜氏。

酒坂本

-どのように変わったのですか。

「40年代の後半になって日本酒を飲む人が少なくなったんです。あと造り手の減少ですね。この頃から、杜氏自身も働きだしましたね。やはり、若い人達がビールやワインブームに影響されて、そっちの方を飲むようになったんですよ。造り手の減少は、農業の形態が変わったことが原因なんです。昔の農家は、春から秋にかけて田んぼを世話し、冬暇だということで酒造りを行えたんですよ。ところが、今の農家は冬でもビニールハウスなどで何か栽培するようになったから、年中勤めるようになって酒造りが出来ない状態になってしまったんです。このニつが原因で酒造りの形態を変えしまって、今では杜氏が一年間に50〜60人減少していると聞きます。」

-杜氏の後継者問題は、かなり深刻ですね。今後酒造りは、どのようなスタイルになっていくと思われますか。

「そうですね。実際、杜氏不在の蔵もありますからね。現地の蔵の若いスタッフで酒造りが行われていくのでねえかな。まだ、杜氏がいる蔵は、杜氏がスタッフに教えて誰が杜氏になるのではなく、グループ全体で酒を造るそんなスタイルになるのではないでしょうかねー。」

-若いスタッフですか。

「その人達がやらなきゃ困るわけですよ!ただ、若い人達は、理論はたくさん知っているんだけどねー。(笑)杜氏の仕事は、経験と感で行う部分があるから理屈で分かっていても良い酒は出来ない。その部分を若い人達に教えていくのが今後の課題でしょうねー。」

-小田中さん、毎年、酒造りを任されて不安になる時はないですか。

「あります!あります!ありますよ。造りの最中など夜、横になりながら酒が無事に醗酵しているか考えるんですよ。ちょっとタンクの様子を覗きに行くと上手く醗酵されていないタンクが中にはあってですね、夜中一人で温度調整したことがありましたー。毎日が不安ですよ。やっぱり、アルコール成分が出てくるまで心配ですね。だからー、私にとって酒造りは、毎年、毎年が一年生みたいなもんです。(笑)」
(2000年10月6日訪問 取材者 坂本貴男)

土手酒屋の愛称で親しまれた菊の司酒造
春はやわらかな柳の新緑が彩り、夏は鮎、秋にはサケがのぼる美しい中津川。そのほとりにある菊の司酒造。質へのこだわりを貫き通した酒造りの精神が、2000年の今年、全国新酒鑑評会において入賞、秋の岩手県鑑評会で、“菊の司”“七福神”の両銘柄を金賞受賞に導いた。
七福神、菊の司
七福神まいり、清冽菊の司



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